服飾は言葉よりはるかに多くのことを我々に語ってくれる。着用者の心意・心情や身分・地位などの社会的立場、その上美意識までも表出し、それを装わせる側の企図をも示す。この観点から、服飾を手段として中世史の史料を読み解くことにより、歴史を再検討していく。
また、服飾が自己表現の手段であることは、今日の我々の衣生活のなかにも息づいている。この立場から、東日本大震災の被災者が生活を再建するにあたり、最も重視すべき衣服の精神的機能の側面についての調査を行っている。
上記研究概要の視点に基づきながら服飾を手立てとして日本中世の史料を探っていくと、従来の政治史や社会史などからは見えなかったものが見えてくる。さらに絵巻などで装いの態様を検証することで、議論を確固たるものとすることができる。
東日本大震災被災者の衣生活研究については、現地(石巻市・釜石市)において聞き取り調査を実施しているが、生存保証としての衣生活の域を脱し、衣服のみが持つ精神的機能(美的機能)を重視しながら考察している。それにより、衣生活をとおしての人間の本質にまで言及することができると考えている。
着衣をあらわす言葉には「着る」「着用する」「身につける」などがあるが、特に「装う」という表現を用いた場合は、衣服を着ている人物の動作・表情をも伴ったありさまを示す。また、被り物や装飾品、さらに帯びている武器(中世武家においては)なども含む。
人文学系の研究において、〝衣服を装う人間〟を扱う研究でさえあれば、いかなる分野においても参与は可能であると思う。しかし、文献に載っている衣服に関する言葉を拾うだけでは有機的な解釈は成り立たない。そのため、〝形態・文様・色彩・素材を統合した服飾〟の観点からの解釈は得手とするところである。
また、前述のとおり衣服は人間が直接身体に纏うものであるため、精神性との関係が深い。かつて高齢者のQOLを高めるための働きかけを行った際、文化を背景とする装いによるアプローチが有効であることを実証した。このように社会科学の分野においても、装いをとおして未踏の領域の研究を開始する余地は大いにあると考える。
科学研究費助成事業:
『中世武家服飾変遷史』(吉川弘文館)刊行(研究成果公開促進費「学術図書」)H29年度(単著)
東日本大震災の生活再建過程における衣生活の課題と解決方法(基盤研究C)H29~32年度(研究分担)
将軍と周縁の人物たちの服飾表象からみる室町武家服飾史の再構築(基盤研究C)令和2年度~4年度
人生には必ず例外や想定外の事態が起こるものである。制度の網の目からこぼれてしまい掬い取ることができない部分についても、解決できる場として深化していくことを期待している。
主な講義のテーマ | 日常生活をより豊かに営むための知識を身につけるとともに、日本独自の生活文化についても理解する |
---|---|
担当講義名 |
|
講義の概要 | 「家庭科」においては、〝生活を科学する〟という立場から日常生活の事象をとらえ、各領域における学際的な知識を身につける。また、実践学習を中心とし、活動を行って行くなかでの問題点を見いだしながら課題解決の方途について考える。 「生活科」では、各学生が『生活科図鑑』を作成し、春夏秋冬の自然(植物・生き物・気象)・行事・あそび・家族や地域の生活についての知識を身につける。さらに、日本独自の生活文化についても言及し、国際社会において自国の文化を誇らしく語れることを目指す。 |
社会貢献できる関連分野名 | 生涯学習、文化活動ボランティア |
---|---|
直近の講演会のタイトル | 「古典文学意匠」で知的おしゃれを!(渋川東部公民館成人学級〈古典の日企画〉「古典連続講座」) |