新生児・乳児消化管アレルギーは、新生児から乳児において嘔吐や血便などを呈する疾患の総称であり、非IgE依存性アレルギーと考えられている。本疾患は一般のアレルギー疾患と異なり特異的IgE抗体が検出されないことより診断は容易ではない。更に患者の約10%は重症で成長障害などを起こす可能性が指摘されており、精度の高い診断に基づいた治療が切望されている。また、本疾患の病態はいまだ明らかではないも好酸球や好中球の関与が知られており、病態解明には好酸球性炎症、好中球性炎症のメカニズム解明が重要である。これらを背景に、我々は消化管アレルギーに対する迅速な診断管理、病態解明を目指し、診断および病態把握に資するバイオマーカーの探索を行っている。
消化管アレルギーの補助診断としてアレルゲン特異的リンパ球刺激試験(ALST)は有用であるが、新鮮血を多量に要することより患児の負担が大きく検査に時間がかかることが問題である。これらを背景に我々は、迅速、かつ少量の採血量で可能な定量的PCR法を利用した末梢血アレルゲン刺激試験(iPAST)の開発を行った。本疾患において抗原刺激後の末梢血単核細胞でのIL-2Rα mRNAの増加を見出した。現在、消化管アレルギー児と疾患対照児の末梢血全血を抗原刺激し網羅的遺伝子発現解析を行い、本検査法のマーカー候補を同定している。今後、症例数を増やして各マーカーのmRNA発現量を定量的PCR法で測定し、臨床診断との関連の検討や発現マーカーを詳細に解析していく予定である。
当研究室の研究成果や知見から、消化管アレルギーは、好中球、好酸球の両者が複雑に絡み合って病態を形成していることが示されている。近年、慢性炎症を伴ったアレルギー性疾患の好中球性炎症、および好酸球性炎症に、アポトーシスともネクローシスとも異なる細胞死である、好中球細胞崩壊産物(NETs)や好酸球細胞崩壊(ETosis)の関与について報告され、それぞれのマーカーであるMPO-DNA複合体やgalectin-10の上昇が確認されている。
消化管アレルギーにおいても、これら好中球や好酸球の特殊なプログラム細胞死であるNETosisやETosisが病態形成に関わっている可能性があるが、これまで検討されたことはない。多施設共同研究で、これらNETosisやETosisのバイオマーカーについて検討することで、未だ明らかにされていない消化管アレルギーの病態解明の糸口になり、今後、予防法の開発などにもつながると期待できる。
好塩基球細胞株を用いた新規アレルギー検査法の開発 (科学研究費 挑戦的萌芽研究)
期間:2014年4月-2017年3月
好塩基球細胞株を用いた新規アレルギー検査法の開発 (森永奉仕会奨励金)
期間:2013年4月-2014年7月
新生児・乳児消化管アレルギーの診断にむけた革新的検査法の開発(公益財団法人ニッホンハム食の未来財団)
期間:2018年4月-2019年7月
性別に関わりなく多様な人材が活躍できるとともに、大規模な共同研究発展へ繋がる可能性が高まると期待しています。国際的、かつ社会に貢献できる研究者育成や研究発展へ自身も寄与できる様、努力いたします。
主な講義のテーマ | ーー |
---|---|
担当講義名 |
|
講義の概要 | ーー |
社会貢献できる関連分野名 | 医学、小児呼吸器・アレルギー学 |
---|---|
参画している審議会・委員会名 |
|
直近の講演会のタイトル | 食物アレルギーについて |