女性研究者シーズ集

高崎商科大学 商学部
渡邉 美代子[ Watanabe Miyoko ]
研究分野
認知意味論・認知言語学、異文化コミュニケーション
主な研究テーマ
言語相対性と普遍性、認知機構としての言葉と言葉の意味伝達、言語の間主観性、言語・文化における志向性
キーワード
  • 認知機構 cognitive mechanism
  • 身体性 embodiment
  • クオリア(質感) qualia
  • 歴史的要因と文化的志向性 historical factors and cultural intentionality
  • 造語と意味伝達 word coinage and meaning transfer

連絡先
高崎商科大学商学部 渡邉 美代子 教授
TEL : 027-347-3399 FAX : 027-347-3399 MAIL : m-wtnbuv.tuc.ac.jp

・コトバの意味問題:クオリアを中心に前言語的な観点から
  Problems Relating to Words and Meaning: From the Pre-linguistic Viewpoint Focusing on the Idea of Qualia
・コトバの意味問題Ⅱ:志向性・志向的クオリアを中心に文化的偏向の観点から
  Problems Relating to Words and Meaning Ⅱ: From the Viewpoint of Cultural Divergence Focusing on the Idea of Intentionality and Intentional Qualia

難問とされる言葉の意味問題について、大きく二つの観点から考究する。一つは前言語的な観点である。意味形成にかかわる主な要因の一つとして、身体性及びクオリア(質感)という人の先天的(ア・プリオリ: a priori)な因子が指摘される。言語は身体性を基盤に構築された認知機構であることが自然言語カテゴリーを通して認められる。身体性とは、身体の形・特徴のみならず、機能・能力をも含む概念である。人は、環境の中でアフォーダンス(環境が提供するもの)を知覚し、情報化するという営みを通して言葉を生み出し、言語を構築してきたという論証を試みている。
もう一つは、文化的偏向・志向性という観点である。文化的偏向とは、各々の文化に認められる独自の価値観や特質を指し、また志向性とは、心が「何かに向けられている」という性質のことである。異文化コミュニケーションで生じる言葉の解釈のズレというのは、言語間で社会・文化的背景が異なることに起因する。意味形成において文化的偏向・志向性という要因がどのように関与するのかについて考査し、論証を試みている。

自然言語カテゴリーに見る言語相対性と普遍性:身体性に基づく認知・概念理解・言語構築

認知言語学の見地から言語相対性と普遍性(普遍的傾向)がどのように顕在するのか、を日本語と英語の自然言語カテゴリーの構造を通して検証した。基本レベルを基盤として抽象的レベルが形成されている、という自然言語カテゴリーの複雑な二重構造を通して、言語は相対的であると同時に普遍的でもあると提言することができる。そしてこのことは、同時に、言語を通して人々の認知や概念理解の実際を解き明かすことと等価である。
言語には、人の先天的な身体性が組み込まれている。英語と日本語表現の比較において、動作・身体機能や喜怒哀楽などの基本語彙に関しては概ね一致すると指摘される。また、身体によって分けられた空間は、前方が未来で後方は過去を示すという捉え方も二言語間で同じであることを論証した。更に、意識によって知覚されるクオリアは、言葉の意味を紡ぎ出す契機として機能することから、言語における普遍子の存在を示唆すると思惟される。
加えて、メタファーの形成に見る抽象的レベルでは、言語の異なる歴史的背景からの文化的偏向・志向性という要因が関与することが窺える。他言語のメタファーは、母語の感性をもって把握できないことが少なくない。各言語には、それぞれの文化的偏向や志向性が作用し、言語相対性を呈していると捉えることができる。
要するに、言語の構築が身体性に基づくということは、人の認知・理解というものも身体性に基づく作用であると捉えることができ、これまでのパラダイム「言語の恣意性」を斥ける理論となっている。

「言語相対性と普遍性は双方とも言語の側面である」の検証に向けて

言語相対性と普遍性(普遍的傾向)の議論・検証においては、異なる語族に属する複数の言語比較に基づいたものであることが望ましい。一人の研究者の有する知識・情報の範疇における議論・検証というのは、仮説の域を出るものではないからである。日本語と英語の比較に、他の言語が加わることで、議論が深められるとともに、理論の検証が進められることになる。
言語相対性と普遍性に関しては、これまでどちらか一方が強調される傾向にあり、このことは、人間言語の全体を把握した議論・検証の難しさを示唆するものである。因って、言語相対性と普遍性とは、双方ともそれぞれの言語の側面であるという議論・検証において、「群盲象を評す」とならないためには、日本語(ウラル・アルタイ語族)と英語(インド・ヨーロッパ語族)に加えて、他の語族に属する言語との比較・検証が不可避であると判断される。

外部資金獲得状況

地域志向教育研究「地域ニーズに基づいた英語教材の開発:富岡製糸場とその周辺における英語コミュニケーション活動」(2015~2016年度 研究者)

ぐんまダイバーシティ地域推進ネットワークへの期待

女性研究者をはじめ、専門職の女性や女性起業家など、多方面で活躍する女性たちがネットワーク化されることで様々な可能性が見えてきますので、長期的な観点から、そういったネットワークの構築を目指していただきたいと考えます。

教育に関する情報

主な講義のテーマ 基礎英語力を英語運用能力につなげる演習
担当講義名
  • 英語Ⅰ(基礎)
  • 英語Ⅱ(応用)
  • 英語Ⅲ(実践)
講義の概要 英語Ⅰ(基礎)では、日常における英語コミュニケーション活動に誘なうための基盤(基礎英語力)を形成することを目的とする。英語Ⅱ(応用)では、英語Ⅰで培った基礎英語力を活用し、実際の英語に親しむとともに、応用力を養うことを目的とする。英語Ⅲ(実践)においては、英語Ⅰ・Ⅱで習得した英語力を実践的な運用能力につなげることをねらいとする。身近なトピックを取り上げ、多角的な思考・論理に触れながら、自分の意見・見解を形成するという作業を通して、それらを平易な、明確な英語で表現することに親しむ。

社会貢献に関する情報

社会貢献できる関連分野名 ➀英語教育  ②群馬における観光英語の促進(地域志向教育研究「地域ニーズに基づいた英語教材の開発: 富岡製糸場とその周辺における英語コミュニケーション活動」は、『おらが群馬のおもてなし英語』(上毛新聞社出版)として刊行されており、地域観光での活用につなげることが本旨である。)
直近の講演会のタイトル 「群馬の魅力を英語で」(高崎商科大学 地域連携センター主催「新元号「令和」記念特別セミナー」)

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