ABO式血液型システムは輸血・移植医療や、犯罪捜査において血痕等の個人識別のスクリーニングに重要な検査で、全国の警察鑑識において広く使われています。ABO式血液型は20世紀初頭に発見され、1960年代に抗原構造の解析、1980年代の後半から1990年代にかけてABH抗原生合成に関わる糖転移酵素のcDNAの構造(ABO遺伝子)が明らかにされました。私たちの研究グループは、血液型の特性を明らかにすべく、そのABO遺伝子がどのような調節を受け、その結果ABO式血液型物質ができるのか、という「遺伝子発現機構」についての研究を行い、遺伝子のプロモーターや、組織特異的エンハンサーを同定し、それらの塩基配列の変異に基づく血液型亜型の存在を明らかにしました。
1. これまでに、私たちの研究グループはABO遺伝子のプロモーターや組織特異的エンハンサーを同定し、現在はクロマチン構造の変化に基づくABO遺伝子の転写制御機構の解明を行っています。この研究は、ABO遺伝子の存在意義の解明の端緒となるものです。
2. ABO式血液型遺伝子の転写調節機構が完全に明らかとなり、この知見を活かし、血液型亜型の遺伝子診断を含めたABO式血液型の正確な型判定が可能となります。
3. 薬剤添加によるABO式血液型抗原の低下はより安全な血液型不適合臓器移植の実現や血栓症予防に応用できる現象です。ABO遺伝子発現調節の研究はこれを実現するための基礎的なデータを提供するものです。
ABO式血液型は輸血医療や警察鑑識だけでなく、大学の医学部や理学部、看護学校を含む各種専門学校において講義実習の教材に取り上げられています。すなわち、ABO式血液型は実務から教育まで幅広い領域において関心がもたれており、いずれの分野においても共同研究への発展性を存分に有しています。現在、輸血医療においては、血液型亜型の遺伝子診断において日本赤十字社と共同研究を行っています。また、法医学においては、ABO式血液型遺伝子の遺伝子解析を用いた人獣鑑別の研究を他大学と共同で行っています。
ABO式血液型遺伝子転写調節機構解明と法医学および医療への応用(若手研究A)
一人の研究者が出来ることは限られています。多方面からの力を集約し、大きな推進力に変えていけるようなネットワークの構築を期待します。
主な講義のテーマ | 法医学、遺伝学 |
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担当講義名 |
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講義の概要 | 法医学とは、医学および自然科学を基礎として法律上の問題を研究し、またこれを鑑定する学問です。医師の重要な業務である死体検案や死亡診断書・死体検案書の作成などの法医実務に必要な基本的事項を講義します。 |
社会貢献できる関連分野名 | 死因究明、輸血医療 |
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参画している審議会・委員会名 |
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直近の講演会のタイトル | 死後画像検査を取り入れた融合型死因検索の実践 |