遷移金属錯体において、配位子は金属と相互作用することで安定化されたり活性化されたりする。反応性が高い有機化合物、とりわけ13族および14族元素を含む低原子価化合物や不飽和結合をもつ化合物を遷移金属フラグメントで安定化し、その構造をはじめとする性質を明らかにする。現在、R2SI=E (Eは16族元素)が配位した錯体や、ルイス酸性を示す含13族元素化学種が結合した錯体の合成、構造および性質の研究を行っている。
ケイ素ー酸素間、およびケイ素ー硫黄間に二重結合を有するシラノンおよびシランチオンは、ケイ素ー酸素(硫黄)間の分極が大きく、反応性が高い。これらの化学種を安定化する手法の一つは、遷移金属に配位させて錯体化することである。我々のグループでは、遷移金属-ケイ素間に二重結合を有するシリレン錯体のSi=M結合に酸素原子を付加させる方法により、シラノン錯体の合成に成功した。これは、世界で初めての遷移金属シラノン錯体である。また、別法により陽イオン性のシランチオン錯体の合成にも成功している。これらの錯体は、遊離のシラノンやシランチオンとは全く異なる反応性を示す。
シラノンR2Si=Oは反応性が高く、常温常圧下でシリコーン(R2SiO)nに容易に変換される。シラノンの反応性を制御することができれば、様々な置換基Rを持つシリコーンを合成できると考えられる。シラノンが遷移金属に配位したシラノン錯体において、シラノンケイ素上の置換基Rの立体的な大きさが反応性に大きく影響を与える。現在、立体的大きさの異なるRを持つ錯体の合成を行い、安定化と反応性の維持のバランスについて検討している。常温常圧で、シラノン誘導体として扱うことができ、さらに反応性を有する’シラノン錯体触媒’の合成を目指している。
多くの研究者と交流を持つことで、新たなイノベーションが生まれることと思います。少しでもお役に立てるよう、現在の研究テーマをさらに追及していこうと考えています。
主な講義のテーマ | 錯体化学、有機合成化学、無機化学 |
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担当講義名 |
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講義の概要 | 有機金属化学の基礎的素反応、触媒反応について講義し、さらに工業化プロセス、特にヒドロホルミル化やハーバーボッシュ法などの反応概要、意義、社会的影響について話している。 |
社会貢献できる関連分野名 | 触媒的有機合成、遷移金属触媒合成 |
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