器官発生の過程では、個々の細胞の分化と、細胞集団(組織)としての分化とが協調して進行することが不可欠だが、このうち組織レベルのマクロな分化過程がどのように制御されているのかについてはまだ不明な点が多い。DLG1は、細胞極性や細胞間接着に寄与する蛋白質で、Dlg1遺伝子欠損マウスでは、心臓、腎臓、生殖管、消化管、骨、内耳コルチ器など、多様な器官の発生異常が生じ、一部の器官で、収斂伸長と呼ばれる組織の変形運動に異常が生じる。このことは、DLG1が組織レベルで器官形成に関与することを示している。本研究では、DLG1の詳細な機能を解明し、これを突破口として、組織レベルでの形態形成制御機構を明らかにしていきたい。
動物の体を構成する器官は、その機能に応じて、また種によって驚くほど多彩な形態をもっている。器官形成とは、未分化で一様に見える細胞集団が、その複雑さを増して最終分化型にまで到達するまでの過程である。器官形成の過程は、均質な細胞から多様な細胞種への細胞分化と、多細胞集団としてのマクロな分化現象から成り立っている。分子生物学の手法によってこれまでに、特に個々の細胞分化を制御するシグナル伝達系と、それに関連する遺伝子カスケードが数多く同定されてきた。これらの重要なシグナル因子の欠損は、しばしば重篤な器官形成異常を引き起こす。いっぽう、細胞間、あるいは組織間の相互作用を基盤とするマクロな分化過程の調節機構については、まだ不明な点が多い。Dlg1遺伝子の欠損はそれだけで数多くの器官を形成不全に至らせるが、その一方で、個々の細胞分化が大きく破綻することはない。つまり、DLG1は、個々の細胞分化よりもむしろ組織レベルの形態形成に特に貢献する分子として、現時点では非常にユニークな存在である。収斂伸長を始めとする、DLG1が寄与する組織発生過程を詳細に調べていくことによって、組織レベルでの器官発生過程を制御する機構が明らかになることを期待している。
①医療機関との共同研究:各種先天性異常の中で、Dlg1遺伝子異常が原因となっている例があるのかどうかを検証するためには、医療機関との共同研究が有効である。②器官発生におけるDLG1機能の検証のためには、組織、器官レベルでの培養技術開発が必要である。③培養組織、器官における細胞の挙動を追跡するため、各種蛍光標識遺伝子改変マウスを用いた解析が有効であり、共同研究ベースでこれらのマウスを使用する必要がある。④組織内、器官内の細胞挙動を解析するためには自動解析技術が有効である。NIHイメージ等による画像解析技術の開発が必要である。
科学研究費補助金(基盤研究C) 「上皮細胞間ジャンクションの再編成におけるDLG1の機能解析」2016年度~2019年度 総額370万円
本研究は、ぐんまという地域性に立脚、あるいは特殊化した課題ではありませんが、このようなネットワークが構築されることにより地域の他機関の研究状況を知ることができ、それにより共同研究が活性化される可能性が高まるものと期待しています。
主な講義のテーマ | 組織学、神経解剖学、細胞生物学 |
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担当講義名 |
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講義の概要 | 担当講義はいずれも医学部医学科の講義。細胞生物学は1年生対象で、一般的な細胞生物学の網羅的な講義の一部(細胞骨格分野)を担当(90分講義1コマ)。組織学および神経解剖学は2年生対象。各テーマにつき60分の講義と120分の実習を担当。 |
社会貢献できる関連分野名 | 基礎医学教育、生命医学教育、研究者の男女共同参画 |
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参画している審議会・委員会名 |
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直近の講演会のタイトル | 「10年に1人の逸材じゃない私が20年「女性研究者」をやってきて思うこと」(日本解剖学会女性研究者の未来を語る会) |