筆者は長らく小学校現場に身を置き、現在、大学での小学校教員養成に関わる中「遊びと学びの関係」に関心を持っている。そして、「遊びと学びの関係」を次のA~Cの3モデルで考えてみた。それは、A:「よく学び、よく遊べ」のように遊びと学びを対立するものと捉える、B:「遊びは学びの基礎であり、遊びの発展したものとして学びがあると捉える」、C:「遊びの中に学びがあり、学びの中に遊びがある」と両者を融合的なものと捉える、である。遊びと学びとの明確な境界線はない。現場や養成課程の指導者(保育者や小学校教員、大学教員)、養成課程の学生は、「遊びと学びの関係」をどのように考えているのか、検証したい。
本学小学校教員養成課程では、保育士資格・幼稚園教諭1種免許状・小学校教諭1種免許状の3つが取得できる。保幼小の連携や接続の重要性が叫ばれている中、これら3つが取得できることは学生にとって強みとなる。現場及び養成課程の指導者(保育者・小学校教諭・大学教員)や養成課程の学生は、上記3モデルについてどう考えているのだろうか。2017年度実施小学校教員採用試験に合格した本学学生に、上記の3モデルについて聞いたところ、B・Cモデルに賛同する者が多かった。学生の中には、「遊びで疑問に思ったことを調べ(学び)、調べたこと(学んだこと)を生かし遊びを充実させる。つまり遊びと学びが相互に作用し高め合っていく」というCの変形モデルでもあろうDを考え出した者もいた。保育・小学校教育を学んでいる学生ならではの発想だと感じた。
現代の子どもには、パソコンやゲーム等疑似体験が多い。また、子どものみならず、学生、現場及び養成課程の指導者自身が遊びや自然体験を知らない状況もある。そして、遊びと学びの関係すら考えたことがない場合もあろう。さらに、現場や養成課程の指導者は、自己の担当するカリキュラムについては理解しているものの、他教員が担当するカリキュラムについてほとんど知らない状況もある。例えば、幼稚園の「影ふみごっこ」という遊びは、小学校理科3年「太陽の動き」という学びに繋がるが、異校種間のカリキュラム理解はほとんどなされておらず、幼稚園と小学校で遊びと学びは相互に関連付けられていないようである。そこで、保幼小大の校種をこえた異校種間連携が本研究の特徴となる。
複数の大学等で、指導者や学生が「遊びと学びの関係」をどのように捉えているか追究し、保幼小大の連携カリキュラムの試案作りをしたい。保育では遊びの中で学ぶことが多く、小学校では学びの中に遊びの要素を入れ、児童が主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)をすることが求められる。
具体的には、現場や養成課程で、次の①~④の共同研究への発展性が考えられる。
①現場や養成課程の指導者(保育者・小学校教諭・大学教員)や養成課程の学生の遊び体験の有無について調査する。②現場や養成課程の指導者(保育者・小学校教諭・大学教員)や養成課程の学生が、「遊びと学びの関係」をどのように捉えているか調査する。③保育所指針・幼稚園教育要領と小学校学習指導要領で、系統性のある活動や学習を洗い出す。④上記①~③を基に具体的な保幼小大の連携カリキュラムの試案を作成する。
以上の調査・研究について、できたら群馬県教育委員会や教育産業界等もまじえ、産学公連携や学際的な研究を目指したいと考えている。
・科学研究費補助基盤研究(C)「分権化時代における教育ガバナンスと地方教育行政システムに関する理論的・実践的研究」研究協力者【2009~2011年度】
・早稲田大学教育総合研究所一般研究B-9部会「分権時代における地方教育ガバナンスに関する研究」研究協力者【2012~2013年度】
・科学研究費補助基盤研究(C)「高等学校における性の健康教育の実施に向けた養護教諭の資質能力の向上の研究」研究分担者【2012~2014年度】
義務教育現場では、地域の複数校での研修や共同研究がよく行われている。しかし、大学では、同じ県内でも隣の大学でどのような研究がされているかほとんど知らない。そんな中、今回の地域推進ネットワークは、特に小規模大学にとって、研究が推進されるものと考える。
主な講義のテーマ | 小学校教育実習、小学校教科概論及び指導法、中学校教科教育法(社会科)、チームケア |
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担当講義名 |
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講義の概要 | 「小学校教育実習の事前事後指導」「国語科や社会科の指導法」「教職実践演習」等、教育実習時、教育現場初任時に必要な「実践的指導力の基礎」を育成する講義を担当している。特に、長年にわたる教育現場や教育行政(教育委員会)での体験を生かし、理論と実践が融合する授業づくりを心掛けている。また、3学部1学科(社会福祉学部・看護学部・リハビリテーション学部・医療福祉学科)の学生が学び合う「チームケア入門Ⅰ」では、例えば、「右片麻痺(75歳)、発達障害(9歳)」に対して、専門職としてどのような支援ができるか、多職種の理解と連携についても、T・T(ティーム・ティーチング)をしている。 |
社会貢献できる関連分野名 | 教育、医療、福祉、保育、子育て、チームケア |
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参画している審議会・委員会名 |
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直近の講演会のタイトル | 「幼児・児童生徒を持つ親の役割~大学生を見て思うこと~」 「最新の教育事情と学校現場の課題」 |
○日本教師教育学会、日本教育行政学会、日本学校教育学会、日本教育経営学会、日本思春期学会等の会員として、研究発表を行っている。
○現在、担当している授業「チームケア入門Ⅰ」において、3学部1学科での多職種連携について学生と学んでいる。今後、学内だけでなく他大学との共同研究にも繋げることができる。