子育ての悩みは多種多様であり、親自身のジェンダーによる影響は大きい。悩みや困難を抱える親の多くは女性であり、その問題はジェンダー研究によって得られた知見との関係が強くみられる。育児行動の問題的特徴とその解決にそれがどのように効果を発揮するのか、仮説をもとに教育・講座プログラムを開発し実践での効果の検証を行う。
子育て支援講座は少子化対策や虐待問題対策としても企画され増加している。しかし、子育てする親(特に母親)のかかえる課題は、育児方法の改善を教授するだけでは解決しない。受講者は帰宅後、その方法を試すが効果が得られるのは短期間に終わり、問題状況が再び発生し、振出しにもどることが多い。あるいは、さらに自己否定状態に陥る母親も見られる。こうした子育て支援プログラムの問題をジェンダー研究の視点から分析し、学際的な独自のプログラムを開発、実践している。受講者は、女性の置かれた立場性と子育て問題、夫婦関係問題、仕事問題が関連していることに気づき、それへの自分なりの姿勢を考え始める。本研究実践は、子育て支援を通して母親が一人の社会人として生きる支援ともなる。
少子化現象や虐待問題は解決の兆しが見えない。子育て支援はその多くがこれらの問題解決を視野に入れていると思われるが、その効果はけっして大きくない。児童虐待の一歩手前にいる母親たちも多いと推察されるが、各種育児講座は対症療法的なものが多く、相談や事件の統計数字は少子化であるにもかかわらず減少してはいない。問題の根本について、誤った解釈をしている可能性がある。本プログラムでは15年の実施実績から得られた受講者の声を分析することで、ジェンダー研究と教育学の知見を取り入れたプログラム開発を続けている。性別にかかわらず能力発揮できる社会状況をつくるという目標に対して、すでに産学連携は行っているが、今後は「産」も共に連携し、働きやすい職場づくりや男性育児問題の解決にも取り組みを進めたい。
「『親になること』の今日的意義の再検討と青年期のための次世代教育プログラムの開発」(文部科学省科学研究費挑戦的萌芽研究)
この分野で研究機関が連携することは、この地域の未来にとって大きな意義があると思います。その成果、波及効果に期待します。
主な講義のテーマ | 性の多様性、性別秩序と社会課題、性別秩序と育児・教育 |
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担当講義名 |
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講義の概要 | 性別による秩序がもたらす社会課題や、その他の人権問題を基本的な理論や概念の知識をもとに考察し、自分自身の内なる「まなざし」と社会課題との関係や、構造的問題と自分との関係を見出し、社会現象を自らとつなげる視座を獲得する。 |
社会貢献できる関連分野名 | 子育て支援、教育 |
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参画している審議会・委員会名 |
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直近の講演会のタイトル | 「性の多様性について -性的少数の子どもたち-」 |