厚労省は,アドヴァンス・ケア・プランニング(ACP)の重要性を強調し,その周知・浸透のためACPの愛称を「人生会議」とした一方で,一般市民は「(終末期医療について)知識がないため何を話し合っていいかわからない」とする調査報告がある(厚労省,2017)。本研究は,ACP推進のため,一般市民が必要とする「終末期医療に関する情報(情報ニーズ)」を明確化し,「情報提供」に特化した一般市民向けACPガイドブックの作成を目的とする.意思決定能力をもつ一般市民の情報ニーズに沿ったガイドブックを作成することにより,地域におけるACPの普及・推進に寄与できると考える.
2018年,厚生労働省は人生の最終段階について日常的に話し合うことが重要であることを周知・浸透することを目的にACPの愛称を「人生会議」とした.しかし「意思表示の書面作成に賛成」するものが66%である一方で,実際に「意思表示の書面を作成していない」は91.3%である.2020年,新型コロナウィルスが猛威を振るうなか,自身の意思を表明する間もない「突然の死」が存在することと同時に,人間の死は100%の確率でいつか必ず訪れることを多くの日本人があらためて実感させられた.ACPはプロセスであり,「意思決定」は対象となる本人主体のものである.しかしながら,「ACP」や「意思決定支援」に関する先行文献は多数存在するもののその多くが「闘病患者」または「死期が近づいた方」を対象とした「支援のあり方」や「倫理的ジレンマ」等,臨床における患者を支援する側の視点からのものが多数であり,判断能力のある一般市民を対象にしたものや,対象者側の知識や意識に焦点を当てたものは希少であった.本研究では「一般市民」に焦点を当て,「情報ニーズ」の視点からACPを検討することに特徴がある.一般市民の考える「人生の最終段階の医療やケアとは何か」を明確にした上で,ACPのファーストステップとして必要な医学的情報を整理し,ACPに関する知識を含めそれらを体系化したガイドブックを作成することで,地域におけるACPの普及・推進への寄与を目指す.
2025年を目前に,高齢者医療の現場では「本人主体」の「意思決定」が模索されているが,在宅も含め医療現場はすでに「人生の最終段階」場面であり,本来はそこに至る以前に「本人の希望を本人に考えてもらう」ことが重要であり,判断能力が健全なうちにその機会を作ることが必要と思われる.地域におけるACPの推進のためには、地方自治体の力は大きいと思われるが、一方で高齢者福祉関連施設や自治会などの活用も重要である。また、対象となる一般市民のニーズ調査や意識調査がその前提となることや、ガイドブックやエンディングノートを利用し、いわゆる「終活」を市民に正しく周知し、理解してもらうことが第一段階といえ、高齢者福祉分野との共同研究や、産官学連携での事業展開も検討できると考える。
日本学術振興会学術研究助成基金助成金(基盤研究C) 2021 年~2024 年
一般市民の情報ニーズに特化したアドバンス・ケア・プランニングガイドブックの開発
(基盤研究C) 平成26年~平成28年 死別による父子家庭のニードおよび社会的支援の現状と展望
(挑戦的萌芽) 平成19年~21年 子どもをもつ若年層寡婦のニードとそのグリーフサポートプログラムの開発に関する研究
様々な分野の方々と連携し、知見を深めていきたいと思っております。
主な講義のテーマ | 公衆衛生看護,看護倫理,臨床倫理 |
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担当講義名 |
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講義の概要 | 医療倫理の歴史的発展についての理解を深めながら看護における倫理の基本的知識を学ぶ。また、倫理原則や倫理綱領を基盤にしつつ、それだけに頼ることのない倫理的アプローチ方法を探求し、学生としての倫理観、医療現場における看護職者としての倫理的責任と、チームケアにおける看護職者の役割について学習する。また、ケーススタディやグループディスカッションを通して、“医療を行う側”と“医療を受ける側”それぞれの立場における価値観の相違や、倫理的問題を取り巻く背景を理解しながら問題解決の方策を探る。 |
社会貢献できる関連分野名 | 保健、医療、福祉 |
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参画している審議会・委員会名 |
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直近の講演会のタイトル | 看護と倫理(基礎編)~やさしい看護倫理/倫理的ジレンマを考える~ |
臨床倫理認定士(日本臨床倫理学会認定)