ホルモン/増殖因子インヒビン、アクチビン、フォリスタチンの母体および胎児-胎盤系における機能を探索しています。特に、早産の主因である絨毛膜羊膜炎へのインヒビン、アクチビン、フォリスタチンの関与を、絨毛膜羊膜炎Blanc Stage 3モデルとしての培養系を用いて研究しています。この過程で、これらの増殖因子の羊膜細胞に特徴的な発現パターンを観察し、絨毛膜羊膜炎が進行した段階ではアクチビンが優位となることが推測されたため、羊膜細胞におけるアクチビン発現調節機序を検索中です。一方、妊娠時の主要な疾患である妊娠高血圧症候群においては、母体血中のインヒビン、アクチビン、フォリスタチンが上昇することが報告されているため、これらの増殖因子の両疾患における機能の相違を検討する予定です。
インヒビン、アクチビン、フォリスタチンは下垂体前葉の卵胞刺激ホルモン(FSH)の合成・分泌調節因子として卵巣から同定されたホルモン/増殖因子です。インヒビンについては、1932年にすでに存在が提唱されていましたが同定は遅れ、一時は幻のホルモンと呼ばれたホルモン/増殖因子です。提唱から約半世紀後の1985年に群馬大学産科婦人科学教室において単離精製されました。その後、アクチビン、フォリスタチンが発見され、これらのホルモン/増殖因子の下垂体以外の様々な組織・細胞における発現や作用が報告されましたが、その一つが、母体-胎児胎盤系における報告です。霊長類の胎盤はインヒビン、アクチビン、フォリスタチンを発現しており、妊娠高血圧症候群ではこれらの母体血中濃度が上昇することが報告されています。また、炎症性疾患ではアクチビンの発現が増加し、ヒトの敗血症および実験動物における敗血症モデルでは血中のアクチビン上昇は重症度と関連することや、子宮内感染症の合併により羊水中のアクチビン濃度が上昇することなどが報告されています。しかし、妊娠高血圧症候群や絨毛膜羊膜炎におけるこれらのホルモン/増殖因子の発現上昇機序と機能は不明で、その解明を目指しています。
敗血症では血中アクチビン濃度と重症度が関連することや、アクチビンの作用を負に制御するフォリスタチンを事前投与された実験動物では敗血症による死亡率が低下することが報告されていますが、絨毛膜羊膜炎においてアクチビンがどのような作用を発揮しているかはまだ判っていませんIn vitroの報告ではアクチビンが、絨毛膜羊膜炎を増悪させる可能性が報告されていますが、ヒトの胎児に与える影響は不明です。産科や小児科との共同研究により、胎児への影響を明らかにできると考えます。また、妊娠高血圧症候群で母体血中のインヒビン、アクチビン、フォリスタチンが上昇することが報告されていますが、このことが母体にどのように影響しているかも明らかになっていません。インヒビンが腫瘍血管の形成を促進することや、インヒビンの分子種の一つ、インヒビンAについて、妊娠初期のインヒビンA高値が、その後の若年性の心血管疾患発症のリスクファクターであることが最近報告されていることから、妊娠高血圧症候群で上昇したインヒビンが循環器系に作用している可能性が推測されます。産科や循環器内科との共同研究により実証できると考えます。
シーズから芽吹き育ち開花する多様な花を楽しみにしています。
主な講義のテーマ | 生体内生理活性物質の分析と発現解析 |
---|---|
担当講義名 |
|
講義の概要 | 臨床化学、遺伝子検査学、RI検査技術学、生体情報分析科学特論・演習では、生体成分の構造、機能および代謝とそれらの異常をもたらす遺伝子異常について、分析法の理論と分析結果に基づく病態の解析について講義しています。細胞培養技術学演習では、哺乳動物細胞の培養法について、基礎的知識と技術が習得できるよう講義と実習を行っています。 |
社会貢献できる関連分野名 | 医学 |
---|